2018/09/27
防災・危機管理ニュース
![](https://risk.ismcdn.jp/mwimgs/d/1/670m/img_d153da8222fb89ff6dd5b134f006dd1e227032.jpg)
防災科学技術研究所とLINEは26日、インターネットやAI(人工知能)技術を活用した防災・減災に関する連携協力で協定を締結した。防災科研が中心になって整備する「府省庁連携防災情報共有システム(SIP4D)」と通信アプリの「LINE」を連携。設置される防災アカウントを通じた災害情報の配信のほか、被災者から情報収集やAIを用いた質問への応答などを行う。
LINEアプリは2011年の東日本大震災を契機に、災害時にも通じやすいネットを利用したコミュニケーションツールとして開発。2016年の熊本地震では熊本市など地方自治体でも活用された。LINEは熊本市と協定を2017年に締結したほか、熊本地震で起こったことを検証し、その後の災害対応への改善を進めてきた経緯がある。
![](https://risk.ismcdn.jp/mwimgs/e/4/670m/img_e4ff3936675927d0b6df2b31b96982e0119040.jpg)
関係する府省庁など機関が持つ災害情報を集約し、地図に表示するなど使いやすくまとめるSIP4DをLINE、さらには情報通信研究機構のツイッターからの災害情報抽出システムと連携させる。LINEに防災アカウントを設置。被災者から通じ画像や動画、位置情報などを収集する。それらをSIP4Dに反映。被災者には必要な情報をアカウントから配信していく。AIチャットボットにより、アカウントでは被災者からの質問にも回答を行う。AIはデマ対策のため情報の真偽の判断にも用いられるという。
26日に東京都新宿区のコンフォート新宿で協定の締結式が行われた。防災科研の林春男理事長は「防災科研ではネットでの情報発信を掲げた(2022年度までの)7年間の第4期中長期計画の3年目を迎えている。現在は1人1人にうまく情報を届けられてはおらず、これができないと防災・減災は立ち行かないと思う。LINEとのパートナーシップは新たな価値を生み出せる」と協定の意義を説明。LINEの出澤剛社長は「LINEは震災をきっかけにできたもの。CSRとして社会的課題の解決を図っており、その中でも防災・減災には強い思いがある」と述べた。
![](https://risk.ismcdn.jp/mwimgs/f/b/670m/img_fb8e6c240e5aa7ca8593b21359a32b52252753.jpg)
またパネルディスカッションに出席した防災科研・総合防災情報センター長の臼田裕一郎氏はSIP4D の概要を説明したうえで「防災科研では災害における社会動態の研究を進めており、LINEと組んでこの分野に注力する」と語った。LINE執行役員・公共政策室長の江口清貴氏は「防災科研とは夢のコラボレーション」と評価したうえで、「発災後30分でいかに情報を集めるかが、本当に重要となる」と述べ、初動でできる限りの減災を行い、今回の取り組みを救助や復興の強化推進につなげることに意欲をみせた。
LINEではすでに兵庫県尼崎市などでAIチャットボットを用いたLINEでの問い合わせ対応の取り組みを行っている。今回の協定に基づいた訓練を自治体も参加し年内にも実施予定。江口氏は取材に対し、「これまであまりLINEを活用していない自治体の方がいい」と語り、3回程度行われる見込みの訓練で課題を発見し改善を図る方針を語った。
■ニュースリリースはこちら
https://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2018/2394
(了)
リスク対策.com:斯波 祐介
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
安易にさわると火傷するOT環境のシビアさ
PART1では、企業を取り巻くデジタルリスクの現状と課題を見てきました。PART2はモノの生産に直接関わる工場に焦点をあてます。OTがITと融合しインターネットにつながることで、これまでにない脅威が侵入している生産環境。PwCコンサルティングの上村益永氏に、工場のシステムリスクとセキュリティー対策の取り組みを聞きました。
2024/06/17
-
最も対策ができていないのは「過去の降水量調査」自社施設の浸水リスク「不明」との回答も多数
リスク対策.comはこのほど、企業の水害対策の取り組み状況を把握するとともに、BCPにおける課題を明らかにするため、豪雨災害を想定したシミュレーション型のアンケートを実施した。アンケートは、6月のある日、大雨が降りだし、線状降水帯なども発生し、企業が被災するというシナリオを、フェーズごと20の質問にして提示し、企業が各シナリオに対してどの程度備えているかを「1.全くしていない」~「5.かなりしっかりしている」の5段階で自己評価してもらった。リスク対策.comのメールマガジンの購読者および全国の経営層を対象にしたインターネット調査で計667件の有効回答を得た。
2024/06/15
-
-
-
危機管理担当者も押さえておきたいソフトウェアサプライチェーンにおけるSBOM管理の基本知識と企業への影響
本勉強会では、株式会社日立ソリューションズのSBOMエバンジェリストである渡邊 歩氏にSBOMの基本的な知識をわかりやすく説明していただくとともに、グローバルに加速するSBOMが必要とされる社会的背景と、企業経営や事業活動に及ぼす影響についても解説していただきました。2024年6月7日開催。
2024/06/12
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年6月11日配信アーカイブ】
【6月11日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:BCP支援のあり方
2024/06/11
-
基本からわかる脱炭素対策!排出量の算定と効果的な削減方法を徹底解説
本勉強会では、排出量の算定と効果的な削減方法について解説していただきました。2024年5月28日開催。
2024/06/06
-
デジタルインシデントはハザード級になっている
システムトラブルに起因するインシデントが多発しています。業務システムが大きく複雑になるほど、止まったときの影響も甚大。DX が進むことで、それはハザード(災害)級になりつつあります。神戸大学大学院工学研究科特命教授の森井昌克氏に、企業を取り巻くデジタルリスクの現状と課題、対応策を聞きました。
2024/06/06
-
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方